我が家のサンタクロース

わたしには春夏秋冬稼働のサンタクロースが3年間いたことがある。 見返りのないことを、私は家族以外の誰かの為にこんなにも続けられるだろうか? サンタクロースの正体は近所に住む濱野さんちのおばあちゃんだ。おばあちゃんに出会ったのは子供の学校の資源…

精神薬を飲むこと

たっくんのアカシジア(足のムズムズ)がエビリファイを中止したらおさまった。だけど、次に処方されたジプレキサの副作用は強い眠気だった。 デート中も終始眠そうにしていて、運転もあんまり長時間だと、隣から見ているとたっくんの目がとろ~とし始める。…

きみちゃんと桜

きみちゃんはどう見ても可愛くない顔を鏡に映して、両人差指を頬の真ん中に指し「きゃわいいっ!」と斜め角度45度でポーズを決める。鼻の横にでっかいホクロがあって、よく職員に「きみこ、でっかい鼻くそがついてんぞ」とイジられ「あら、やだ〜」と笑って…

秀ちゃん

患者さんに自分の名前を呼んでもらえると嬉しい。他の誰でもない私を呼んでくれている事に自分の価値を見出だせる気がする。 だから、なかなか個別の認識が難しい患者さんにも「私誰だっけ?」「さ.い.き!」「はい、言ってみて」なんて暇があると、そんな…

葉山さん

料理のさしすせそ ならぬ看護の超基礎、基盤を私に教えてくれたのは、まぎれもなく葉山さんだ。 感謝している。(だいぶ後になって。)私は病院に新人看護師として入職して5年間葉山さんと仕事をしたのだが学ぶことが沢山あった。葉山さんは50代、ベテラン看…

塚地さん

塚地さんは、病院に出入りしている害虫駆除業者さんだ。 お笑いコンビのドランクドラゴンの塚地さんに体系と雰囲気が似ているので、私のなかで勝手にそう呼んでいる。 塚地さんは年に2、3回病棟にやってきて壁際や部屋の隅に薬剤を噴霧していく。 ブルーの…

骨メタの酒井さん

聴診器を手に取ると思い出す人がいる。 酒井さんだ。 私がまだナース1年目のとき酒井さんは入院してきた。酒井さんは元は大工さんをしていて細見の体型ではあったが威勢のいいおじさんだった。ご飯の時も他の入院患者さんとホールで食事をするのだが、片膝…

疎外感

自分のなかのモヤモヤを言葉にできなかったけど、ぴったりの言葉を見つけた。 疎外感。 あぁ、それだそれだ。ぴったりハマる言葉に置き換えられたお陰でモヤモヤがスッと胸から胃まで落ちた。 イジメられている訳でもないのに感じる居心地の悪さ息苦しさ。楽…

訪問看護ステーション①

新しく入職した精神科特化のスマイル訪問看護ステーションのメンバーを紹介しよう。 一人目「マスク下顔面偏差値低過ぎて引く所長」申し訳ないけどこれは自分の思いも含めたネーミングになってしまった。内科から外科やら色んな科を制覇し師長クラスも経験し…

2月5日 雪

雪予報なんてどうせ外れると思っていたら、お昼まえにはチラチラと雪がちらつき夕方には雪景色になってしまった。ノーマルタイヤなので1時間早めにパートをあがらせてもらう。 帰り道、曇った空に雪を枝に乗せた木々が遠目に薄いピンクの満開の桜に見えた。…

2月4日

心がざわつくと、私は聴診器をクローゼットから引っ張り出す。自分の 呼吸の音、お腹の音に耳をすます。万年便秘のくせに私のおなかはこぽこぼ、ぐーとなんだか活発に動いている。 自分自身の音を聞くと、生きているんだなぁと思って少しだけ安心する。聴診…

自己判断の断薬 続き

昨日のモヤモヤした電話の後も、ずっとモヤモヤが晴れなかった。自己判断で断薬。思い浮かぶのは、あの時の別人になった たっくん。妄想バリバリで、私は疑われ決めつけられ怒鳴られて、逃げられて、突き飛ばされて、それでもしがみついて入院させたあの時。…

自己判断での断薬

何の気なしに、彼に「薬ちゃんと飲んでるる?」って聞いたら「のんでない」って返答があって、さっきまでのほんわかしたビデオ通話の空気がスッと引いた。さっきまで笑顔だった私の表情が追いつかず、こわばった笑顔が通話画面に写っている。 2ヶ月まえから…

ほそーく、ほそーく尖った大切に溶かしたキャラメルのような月。 暑い暑いと言う間に、もう朝晩冷える秋が来て、今年ももう現状維持で終わっていくんだろうな、私、と月を見ながら思った。 もし余命を告げられたなら、今すぐ今の仕事を辞めてやりたい事だけ…

プロポーズ⑭

貧乏ケチ子は朝7時20分のバスに乗ってたっくんの初めての病院からの外出に出発! 国際バスは駅まで240円、市内循環バスは100円。たとえ本数が少なくとも譲れない。早く着く分にはいいのだ。 田んぼの稲が元気に育って田舎の夏の風景だ。梅雨の中休み、暑い…

まきちゃん

まきちゃんは高校2年生。 眼鏡をかけていて、長い黒髪をいつも飾り気のないゴムで下のほうに1つ縛りしている。ご飯を食べる時と寝る時以外は病棟から出て携帯でゲームをしている。 まきちゃんはお父さんと2人暮らし。お母さんは亡くなっている。 年頃の女子…

そんなもん

仕事がつまんない、面白くない、評価されることもないし 「俺も、そうだよ」 みんながワイワイ仕事中に盛り上がってても、冷めてる自分がいるんだよね。 馬鹿みたいってだいたい作り笑いしてる。 「そんなもん、だよ」 宮本くんも仕事楽しくないの? 「楽し…

井村屋のあずきバー

あたしを唯一救ってくれる井村屋のあずきバー。仕事終わりにベルクで買う69円の幸せが今日も染みる。 今の仕事やめたいなぁ。 1年やって楽しくないんだから、何年いても楽しくないと思う。 意地悪な人はいないけど、居心地が悪い。作った自分に作った笑顔、…

500円のバナナジュース

お金に対する価値観って人それぞれだなぁって思う。自分で働いたお金を自分で使うんだから、大きく逸れない限りどの感じ方や考え方も間違っていないと思う。 という前提で…。 わたしが務めるデイサービスでは外出活動が多い。ドライブなど車から利用者さんを…

10分の面会 ⑬

たっくんが入院して10日。初めての面会へ行く。家族のみの許可らしいが、先生がたっくんとの関係性を理解してか許可が出て予約がとれた。 バスと電車ですんなりいけば2時間といったとこだ。乗り換えの駅で病棟にお菓子を買う。たっくんとも面会中にモンブラ…

入院した次の日 12

たっくんが入院した次の日の朝、たっくんのお兄さんから電話があった。 「今朝、病院から電話があって、なんかたくが首つったみたいで」 ??????? 首つる? え?たっくん死んじゃったの?? お兄さんの電話の話し声は落ち着いている。未遂??? 話を…

入院するまで 11

19時半病院に到着。車で問診票をたっくんと一緒に書く。心配して車の窓から話しかけてくれる義理のお姉さん達の声掛けをたっくんは無視し、私の方に身を寄せた。車からは素直に降りてくれる。私の経験では入院が嫌でなかなか車から患者さんが降りなかった…

入院するまで⑩

受け付けのおばさんが、気を使って絆創膏を私にくれた。お礼をいって腕にはると思ったより血が滲んだ。くそっこれくらい! 今までの一部始終をみてクリニックのナースが、別室に通してくれて個室で入院調整連絡を待つように言われる。たっくんにはお薬を1錠…

入院するまで⑨

たっくんからメールがきて 従兄弟のおじさんも病院についていくことになったからと言う。たっくんは家を知っているのに、家から少し離れたところにおじさんに車を停めてもらい、歩いてそこまで来てほしいという。私が車を見つけて歩いていくと、たっくんは車…

入院➇

5月24日 たっくん精神科医療保護入院。個室隔離。

朝の電話⑦

目覚ましアラームより早く目が冷めた布団のなかでぼんやりと現実に頭を切り替えようとする。もわ〜とした頭に たっくんの現状をハッと思い出し憂鬱な気持ちになる。 諦めているけどラインをひらく。既読されていない、着信もない。 今日は病院に行けるんだろ…

消息不明⑥

5月22日の午前9時40分のラインを最後に又たっくんと連絡がつかなくなった。ラインは既読にならず、電話は呼び出し音が永遠鳴っている。夜は心配をぐっと我慢して寝たが、朝まだ既読がつかないラインと変わらず出ない電話に布団の中で迷ったあげく、たっ…

5月20日➄

たっくんの左上腕に私が掴んだアザが、私の左手首には たっくんが振り払うときに私を掴んだアザがあって お互い見せあって笑った。 たっくんはあの日のことを覚えていた。私がたっくんを見失った後 リュックにいれたパソコンや携帯は情報が漏れるから電源は…

生きづらい④

たっくんからラインがきて 家に戻ってきているという。私への謝罪の言葉と病院にいこうと思うという内容。 あの日 たっくんを引き留めようとつかみ合ったあの日をたっくんはどこまでおぼえているんだろう… 病院に行く気になってくれた… ほっとする。わたしの…

5月16日③

浅い眠りを諦めて、目覚ましアラームがなる前に時間を見ようと携帯を手にした。 ぼんやり働かない寝不足の頭でラインの通知をみる。たっくんから。 先だつ、、不幸をおゆりしくだ、、、あっさいい いままっっで、、、ありがと さよなら え?なにこれ 処理で…