疎外感

自分のなかのモヤモヤを言葉にできなかったけど、ぴったりの言葉を見つけた。

疎外感。

 

あぁ、それだそれだ。ぴったりハマる言葉に置き換えられたお陰でモヤモヤがスッと胸から胃まで落ちた。          イジメられている訳でもないのに感じる居心地の悪さ息苦しさ。楽しくないのに無理をして作る笑顔。            朝、鉛のように重たい体を時間をかけて起こして身支度をするけど、おぇっと吐くまでいかない吐気が何度か繰り返されて、あぁ、自分はまあまあ限界なんだなと感じた。

お気に入りか、正社員かなどによって変わる上司の情報共有の不平等さに気づき始めたけど、自分の被害妄想だと困るので気にしないような努めた。自分が他と比べて能力が低いとか任せられないと思われていると感じたけど、確かに能力が低いのかもしれないと思うようにした。

でも、私にもプライドがあるんだよ。人を視ているんだから、きちんと教えて欲しいんだよ。

先月で退職した1番話しやすかった 井川さんに勇気を持って相談の長文ラインを送ったら、疎外感を感じて辞める職員が他にもいた事を知った。

私の感じていた感情は別におかしくない、本当に不快なものであることや、辞める理由にもなり得ることを知って妙に安心した。

あからさまなパワハラはないし、陰湿な人はいない、みんな職員は笑っている。まるで辞める理由なんてないこの場所に、吐気を感じる辛さを感じる私は        普通だったみたいだ。

訪問看護ステーション①

新しく入職した精神科特化のスマイル訪問看護ステーションのメンバーを紹介しよう。 一人目「マスク下顔面偏差値低過ぎて引く所長」申し訳ないけどこれは自分の思いも含めたネーミングになってしまった。内科から外科やら色んな科を制覇し師長クラスも経験している、たぶん50代ベテラン看護師だ。私が短期で退職すると告げた途端豹変したため悪意をこめた呼び方になってしまった。 マスクをとったときのブルドッグのようにたるんだみっともない頬。申し訳ありませんと深く謝罪した私をシカトし、退職意思を示した後わたしの仕事内容も無視。いないものかのようにスルーしていったおばはん。入社1年目で所長になったらしい。

二人目、「トリンドル」         トリンドルは1番ステーションのなかで歴が長い。ゆうて3年だが。日本人離れした、ちょっとツンと上をむいた鼻先とパッチリとした目。横からみてもクルンとした睫毛、フワフワした色素薄い系のショートカット。テレビで見る女優さんに良く似ている美人さん。持ち物も洗礼されているのに「これ、ユニクロなの」と笑顔で言っちゃうタイプだ。こちらも総合病院の病棟でバリッバリに働いていた看護師だ。腰を痛めて病棟勤務が難しくなったと悔しさと未練を感じさせる話しを車内で聞いた。顔の美しさとは逆にハキハキ物怖じせず意見するところが看護師の強さと、少しだけ裏の顔を疑ってしまうような感じがした。年齢たぶん 40代半ば〜後半。

3人目「イナバウアー」         これは単に切れ長の目がフィギアスケートの荒川静香さんに似ているという理由。入職7ヶ月め。年齢27くらい。この方はまぁ、可もなく負荷もなくと言ったかんじ。少なくとも私より仕事出来るのは間違いない。総合病院出身。

四人目「りんごちゃん」         出身が青森の26歳。田舎の素朴な大人しい女の子といった感じ。母子共に受け入れるNICU出身。入社3ヶ月め。

5人目 私。「精神科出の優しい看護師」としておく。いいの、自分で言う分には。入社3週間、もう退職意思を伝えた40歳。

以上がステーションのメンバーである。

 

 

2月5日 雪

雪予報なんてどうせ外れると思っていたら、お昼まえにはチラチラと雪がちらつき夕方には雪景色になってしまった。ノーマルタイヤなので1時間早めにパートをあがらせてもらう。            帰り道、曇った空に雪を枝に乗せた木々が遠目に薄いピンクの満開の桜に見えた。 私のように早めに仕事や用事を切り上げた人たちなのか、誰かの迎えなのか、はたまた慎重に運転する車が多いからか、まだ夕方の4時すぎだか道に車が連なっている。                 今日は腰に割れるような痛みがある。生理も遅れている。明日は家から出れないかもしれないと思い、スーパーに寄るが財布をみたら小銭しか入っていない。ATMも見当たらない。諦めた…。

家につくとお腹まで隠れるあったかパンツをはいてパジャマを着込み布団に入る。              なかなか体が温まらないので湯を沸かしてレモンティを飲む。          

明日は仕事を休もう。自分の為に休もう、そう決めて私は毛布を頭までかぶった。     

2月4日

心がざわつくと、私は聴診器をクローゼットから引っ張り出す。自分の

呼吸の音、お腹の音に耳をすます。万年便秘のくせに私のおなかはこぽこぼ、ぐーとなんだか活発に動いている。      自分自身の音を聞くと、生きているんだなぁと思って少しだけ安心する。聴診器を耳にはめると外の音が遮断されて、水に潜ったみたいな感覚になる。自分のおとだけがする世界。そこだけに集中すると深く息を吐き切れる。

誰かの為に自分の時間を使うこと、誰かの心配をすること、生活のために働くこと、節約しつづけること。

どこの場面で自分をいたわるのかなぁ。いつになったら自分の為に生きれるのかなぁ。

 

自己判断の断薬 続き

昨日のモヤモヤした電話の後も、ずっとモヤモヤが晴れなかった。自己判断で断薬。思い浮かぶのは、あの時の別人になった たっくん。妄想バリバリで、私は疑われ決めつけられ怒鳴られて、逃げられて、突き飛ばされて、それでもしがみついて入院させたあの時。 また繰り返すつもりなの?恐怖でしかない。 

今日はクリニックの通院日。朝たっくんがいつも通り時間ぴったりに迎えにきてくれた。わたしは無理していつも通りの演技をしようとしたけど難しかった。        一晩置いた たっくんの気持ちを聞いたら「薬は飲みたくない」と言われた。    え?                 あれだけ私にいわれて、一晩置いてそれ?もうさ、別れるしかないのかなってよぎった。精神疾患の治療をいわば拒否してる人と今後も付き合っていく自信ないよ。  でも怒っちゃいけないと自分に言い聞かせる。頭ごなしはいけない。         「先生にも薬を飲んでなかった事、言いづらいから言いたくない」        「診察の時私も一緒に入ろうか?」     「いや、いい。言っても変わらないから」 そこからも、なんとか薬を変えたり量を調整したりを先生にお願いするように伝えるも「薬飲みたくない、必要ないよ」と渋いかお。                  たっくんはさ、自分のことをどう思ってるか分からないけど、飲み続ける事で安定していられるんだよ。躁鬱病の8割は再発するっていわれてるんだよ?再発してもいいの? 血圧高い人は血圧のくすり飲み続けるじゃん。私もアトピーで付き合っていかなきゃいけないから毎日保湿剤ぬったり時々ステロイドつかったりしてるよ。頭痛薬みたいに痛い時に飲めばいいってもんじゃないんだよ?

あの手この手じゃないけど、なんとかたっくんに分かってもらいたくて説明をするけど、私の話がカラカラカラカラまわってる。

「私、薬飲まないって言われたら…もう無理だよ?」

「仕方ないよね、、、」と首を傾げて言われた。仕方ない? え?

「それって自分の薬に対する考え方と私の考えが合わなくて、それが無理って私が思うなら別れても仕方ないって思ってるってこと?」返事がない。もう、 もうおだやかでいられなくなってきた。「たっくんには病識がないんだよ!たっくんにとっては、ちょっと具合悪くなって入院してミチに迷惑かけたってくらいにしか考えてないだろうけど!わたしが、わたしがあの時、どれだけ…」言葉のうえに感情が覆いかぶさって窒息しそうになる。のどが締まる。言葉が詰まる。

「具合が悪くなったら薬のめば、入院しないよ」 

このたっくんの言葉に血管がぶちりと切れたと同時に私は怒鳴っていた。 

「悪くなってからじゃおそいんだよ!ばか!!!!!あの時たった2週間で転がり落ちるように悪くなったじゃん!!!!!全然自分で気づいてなかったじゃん!!!                 自分でコントロールできなかったから入院したんでしょうがっ!!!!!」

大声で初めてたっくんを怒鳴りつけた。でもこれが1番言いたい事だった。演技も優しい言葉も無駄だった。

息を整えた後

「私だったら愛するひとに二度とあんな思いはさせたくないって思うけどね。」私の腹の下の方から引っ張ってきた言葉が震えて出た。

もう後は病院につくまで私は口を開かなかった。これで伝わらなければ、もうだめだ。別れがチラつく。あの入院を繰り返すことを私はもう負えない。自分の人生が犠牲になるのが見えている。消耗する前に別れなくちゃ自分が潰れる。通院と服薬が肝なのに。どうしたらいいんだろう、、、

病院についた。車内で静かにたっくんに聞いた。「薬飲まなかったこと先生に言うの?」                 「言う…」

診察の順番は私からだ。「あの、私の後に診察する人今お付き合いしている人なんです。でも出された2ヶ月薬を飲んでないみたいで。副作用のムズムズが辛いみたいなんです。」「具合が悪くなった時本当に大変だったんで、又そうなったらと思うと心配で。」私は保険をかけた。主治医の先生はたっくんと同じ先生だし、カルテをみれば解ってくれるはずだ。「私が相談したことは彼に言わないで下さい。」

私自信の診察は30秒くらいで終わった。変わりない。

交代して たっくんの番号が呼ばれる。ちゃんと伝えられただろうか。

会計が終わって車に戻る。たっくんからは何も話してこない。「私が聞かないと何にも教えてくれないの?お薬なんだって?」

「薬かえてくれた」            先生有難う!顔には出さない。     「飲むの?」             「飲む」

「もし、薬が合わなかったら?」     「先生に相談する。」          もう、たっくんが納得してるのか、どんな気持ちなのか全然わからなかったけど、とりあえず繋がった。なんだか自分が偉すぎて、出来すぎる彼女すぎて涙が出た。

「今日は家に帰るね。」自分の気持ちの切り替えに時間がかかりそうで今日のデートは止めた。アパートまでの帰り道私は何も喋れなかった。疲れた。

自己判断での断薬

何の気なしに、彼に「薬ちゃんと飲んでるる?」って聞いたら「のんでない」って返答があって、さっきまでのほんわかしたビデオ通話の空気がスッと引いた。さっきまで笑顔だった私の表情が追いつかず、こわばった笑顔が通話画面に写っている。

 

2ヶ月まえから眠剤以外の薬はのんでいない、ムズムズするのを主治医に言っても薬を変えてくれなかったから、と私が質問ぜめにして彼から聞いた理由だった。

なんで相談してくれなかったの?なんの為に通院してるの?聞かなかったらずっと言わないつもりだったの?一緒に通院してる意味わかってるの? 私がいる意味ってなに?           どんな質問をなげかけても うん。とか分からないとか彼の気持ちが1ミリも読み取れない返事ばかりでイライラしてきた。 あの夏のたっくんの入院から半年、穏やさを取り戻していたのに少し薄れていた躁状態の彼に振りわまされ疲れ切った記憶が頭のなかに呼び戻される。

退院してから彼が通院を辞めてしまわないように私が安定剤をもらっているクリニックに紹介状を書いてもらい 通院日も揃えて2人で受診していた。先月彼はどういう気持ちで飲まない薬を受け取って、「先生に何か言われた?」と聞く私に「別に」と答えていたんだろう。

躁鬱は薬を飲み続けないと再発する、再発を繰り返す度に悪化するって話たじゃない!精神科看護師あんた20年やってたでしょ、断薬して再入院してきた人沢山みてきたでしょ!じぶんはその人たちと別の人間なの?自分で診断ができるの?あんだけ症状があるとき自分の事は客観的にみれないってはなししたじゃん!又私にあの時と同じ思いさせたいの!? おかしいんじゃない。愛する人に心が潰れそうになるほどの心配を何度もかけたいのか!

もし私が聞かなかったら、薬を飲まなくなったことを先生にも私にもずっと話さなかったの?という質問に頷かれて、もうなんと言ったらいいか分からず脱力した。

私が大きな岩を投げてこられて必死で落とさないように守ろうと受け止めたことを、彼はポケットから豆が一粒落ちて私に拾ってもらった感覚なのだろうか。

総称すると なんなの?        すべてもう なんなの?         それしかなかった。

病と付き合っていく彼をなかば背負う覚悟でプロポーズをうけたのに治療放棄ですか。

お酒は3ヶ月くらい辞めて途中から主治医の許可が出て、1週間に1回量を決めてのんでいる。信用してたから最近はお酒を飲める日を「今日は飲める日だねー!何飲むの?「美味しかった?」なんて笑顔で飲める日を一緒に喜んでいたけど、お酒の約束も守ってくれているのか、それも疑いの気持ちがでてしまう、、、。

内服もお酒のことも退院した当初はしょっちゅう聞いてた。とくにお酒は1回で辞められないと思ってたから。「飲んでない?本当に?」って。お薬も「副作用大丈夫?」ってよく聞いてた。けど3ヶ月位たって彼も安定してたし、しつこく聞くのも信用してないみたいで嫌だなと思って、時々ちゃんとねれてる?くらいしか聞かなくなってた。

彼はだんまりだから、わたしがヒートアップして彼を責めることの繰り返すになってしまったから 一旦考えて明日また話そうと電話を切った。

…なんか    疲れた。

 

ほそーく、ほそーく尖った大切に溶かしたキャラメルのような月。

暑い暑いと言う間に、もう朝晩冷える秋が来て、今年ももう現状維持で終わっていくんだろうな、私、と月を見ながら思った。

もし余命を告げられたなら、今すぐ今の仕事を辞めてやりたい事だけ迷わずするのに、今は失敗が怖くて、出来ない自分に又向き合うことも怖くて何も踏み出せないまま ここにいる。

踏み出しても、自分の期待しているようなものはなくて、どこもどうせ同じなんだろうと居心地の悪い思いをしながら働いている。

求人は沢山溢れていて、好きに選べるはずなのに、ものすごく狭くてハードルが高く感じて諦めを感じる日もあれば、いつでも別の仕事にいける!と前向きになれる日もある。

やめたい、やめたい           やめよう、やめようと思いながらいつまでこの仕事をつづけるんだろう。

自分で決めれるのにね、自分で決めれない。

考えすぎなんだろうね。