たっくんの左上腕に私が掴んだアザが、私の左手首には たっくんが振り払うときに私を掴んだアザがあって お互い見せあって笑った。
たっくんはあの日のことを覚えていた。私がたっくんを見失った後 リュックにいれたパソコンや携帯は情報が漏れるから電源は全て切っていたらしい。駅には追いかけてきた私の車があったから駅にはいかず、携帯は使えないので近くの保育園に電話をもっていないから、申し訳ないけどタクシーをよんでほしいと頼んだらしい。偽名をつかって。
あんたが1番危険だよ…とおもってしまう。
タクシーにのってからも隠れるように座席に寝転び 金額にして一万円くらい走ったあたりで降りてビジネスホテルに泊まったらしい。本人としては 敵から逃れてやっと力が抜け少し寝れたようだ。
それで朝私からの着信やラインをみて返信したらしい。
だいぶ興奮や多弁さはおさまったけど、ムラがある。政治の話になると多弁になり、怒りにふるえ涙する。盗聴器疑惑も今だ拭えず、自分ちのコンセントを分解したり、至る所やな盗聴器やらたっくんいわく体感器なるものの存在を疑いつづけている。急にカーテンを閉める、小声で話す、窓の外を伺うたっくん。
病院の初診は24日。あと3日ある。大丈夫だろうか。食事はお兄さんが作ってくれるし買い物も一人で行かないように一緒に行ってくれているらしい。
良かった、、、
私は仕事があるし、子供もいる。いくら心配でもずっと側にいることは難しい。毎日電話をするくらいだ。
お兄さんは 家中のコンセントを分解するたっくんを怒ることもなく たっくんが気が済むようにドライバーを取りにいったりライトを照らしたりブレーカーを落としたり、盗聴器があるというたっくんを否定することなく付き合ってくれていて、安心した。だからたっくんもお兄さんのことは信用しているみたいで、お兄さんの言葉と私の言葉はいくらか頭には入れてくれて、拒絶することはなくなっていた。
精神科の看護師として病棟で冷静に対応できるのは患者さんが赤の他人だからだ。身内では本当に難しい。
なに訳分かんないこといってるん?そんなことあるわけないじゃん、バカじゃん?
もう そう言いたいけど それをいっちゃーオシマイなんだ。