私は、宗教の教えに反して信者ではない人との結婚を決めた。
宗教の中で長となっている(偉い人というか地域ごとの集まりをまとめている人)中年の男性2人と母と私で話し合う事になった。
とりあえずものすごく長の2人に責められた。もちろん丁寧な言葉遣いではあるけど、「絶対に幸せになれない」と言われた。まだ19歳の私に大人2人の男性にボロクソにいわれてしまい、母も何も言えず、もちろん私も何も言えず遠くを見ていた。
選べなくて選べなくて、どちらかを選ぶとどちらかを失う。苦しくて苦しくて、どちらも大切で。神様に本当にごめんなさいという気持ちだった。
いつも参加していた宗教の集まりでも、名前こそ伏せられたが、私の良くない行動について仲間全体にむけて発表があった。わたしはその日集りを休んでいたのだが、母が言うには、ものすごく厳しい言い方だったらしい。
結婚前に性交渉をしたわけではないので、宗教から追放されてしまうわけではない。今まで通り宗教活動をしようと思えば出来た。実際、結婚してからも宗教の集まりには何回か出席はした。 だけど周りの仲間が私を見る目があからさまに変わった。 怪訝な、距離をとるような、よそよそしさ。腫れ物には近づかないという態度。
私は、その時痛感した。 みんなが好きだったのは宗教に熱心な私。人間としての私じゃなかったんだ。 宗教の集まりというコミュニティの中でしか友達や仲間がいなかったから、誰にも祝福されない結婚って解っていた。だけど、ちやほやされていた所からの手の平を返したような周囲の反応に悲しくて、私が大好きだった人達が離れでいくのを肌で感じ私も宗教から足が少しずつ遠のいていった。
そんな時、母から 可奈美ちゃんのお母さんからとプレゼントを受け取った。可奈美ちゃんは同じ宗教の集まりの友達だ。可奈美ちゃんも2世。年が同じで仲良くしていて私は結婚前に彼のことを内緒で相談していた。可奈美ちゃんは、みっちゃんとずっと仲良くしていたいし正しい選択をして欲しいと私の揺れ動く気持ちを否定せず、どう友達として答えたらいいか悩んでいるようだった。同じ年頃の女子だから、痛いくらい気持ちが分かったんだと思う。そのなかで私の為になる答えは本当になんなんだろう。友達として応援してはいけないの?彼女のなかでも揺れ動いていた。
可奈美ちゃんのお母さんがくれたのは、真っ白い紫陽花の鉢植えだった。 結婚して借りたアパートのベランダで紫陽花をみていると、純白のウエディングドレスを着た花嫁みたいで泣けてきた。
だれも おめでとうって言ってくれなかった。一番祝福して欲しい人達に祝福してもらえなかった。 だけど真っ白い紫陽花をみていると、可奈美ちゃんと可奈美ちゃんのお母さんが 「みっちゃん結婚おめでとう」と言っているような気がした。